歯周病の進行は細菌の塊「歯垢(プラーク)」であるため、歯垢を除去する事が治癒につながります。歯垢を取り除く軸となるのはセルフケアであるブラッシングです。
歯石はプラーク(歯垢=細菌)が石灰化したもので、これを放置してしまうと虫歯や歯周病を発症、進行させるリスクが高くなります。
歯垢が蓄積すると「歯石」となり、石のように硬くなってしまい、セルフケア=ブラッシングだけで取り除くことは難しいため、日々のセルフケアが大切なのです。
ひだまり歯科クリニック院長 飛田逹宏
【経歴】
- 平成15年 大阪大学歯学部 卒業
- 平成19年 大阪大学大学院歯学研究科卒業 歯学博士
- 平成19~22年 大阪市内の歯科医院にて勤務
- 平成22年6月 兵庫県芦屋市に、ひだまり歯科クリニック 開業
ひだまり歯科クリニックでは、来院された患者様に丁寧な説明を心掛け、納得頂いた上で治療を行い、患者様にも積極的に治療に望んでもらうとともに、患者様が満足してもらえる治療が提供できるよう、最善を尽くしております。
目次
歯周病の治しかた
進行している場合は歯科医院での治療
歯周病を治すためには、原因である歯垢(プラーク)を取り除いて口内環境を良い状態に保つことが必要です。
歯科医院で行われるクリーニングと呼ばれる治療は、歯垢や歯石を専用の器具で取り除きます。
スケーリング
歯の表面や根の表面の歯垢や歯石を専用の器具・器械で取り除く方法で、多くの場合ルートプレーニングと同時に行われます。
ルートプレーニング
歯の表面のザラザラや歯石、細菌で汚染されている歯の表面の変形セメント質を除去(潤沢化)するために行われ、多くの場合スケーリングと同時に行われます。
また、歯と歯の間(歯間)にプラークの増殖を抑える薬を入れたり、歯石除去の際に痛みが伴う場合は麻酔をかけ、外から見えない歯周ポケットの中までクリーニングする事もあります。
歯周基本治療で歯周組織が改善されて歯周ポケットが2~3㎜に維持されていると判断できれば定期健診であるメンテナンス治療へ移行していきます。
歯周病予防の基本はセルフケア
デンタルフロスを使用する
歯ブラシだけでの清掃の場合、歯と歯の隙間にある歯垢を完全に除去するのは困難なため、専用の清掃器具「デンタルフロス」を活用し、汚れを取り除きましょう。
歯ブラシによるブラッシング単体の場合、歯と歯の間のプラークは61%除去出来た結果に対し、デンタルフロスを併用した場合、79%除去出来たという結果が出ています(https://www.hamigaki.gr.jp/hamigaki1/pdf/hoken03.pdf)1)。
フロスは好きな長さに出来るため歯間ブラシに比べ調整が効きやすく、歯肉に負担をかけるリスクが少ないと言えます。
デンタルフロスは好みの長さに切って、指に巻き付け歯間に挿入して使用します。
挿入出来たら歯にひっかけるようにして上下に数回動かし、歯の側面にそわせるように清掃し、ゆっくりと抜きます。
次の箇所に移るときは指の巻き付けを調整し、使用部分をずらしデンタルフロスの新しい部分を使用するようにします。
また、デンタルフロスが引っ掛かったり切れたりしやすい場合、虫歯などのトラブルが原因となっている場合もあるため歯科医院で相談してみましょう。
タフトブラシを使用する
タフトブラシは通常の歯ブラシで届きにくい箇所にも届いて清掃出来るように工夫された、別名「ワンタフトブラシ」と呼ばれる毛束の小さい歯ブラシです。
通常の歯ブラシだけでのブラッシングでは磨き残しが発生し、虫歯や歯周病の原因となりますが、タフトブラシを併用する事で磨き残した部分をカバーし、口腔内を清潔に保つことが期待出来ます。
タフトブラシは通常の歯ブラシでは毛先が届きにくい箇所の清掃に適しています。
- 歯並びが悪いところ
- 奥歯の奥、一番後ろの部分
- 矯正装置、器具の周辺
- 前歯の裏
- 被せ物の周辺
- 抜けた歯の周辺
- 生えきっていない親知らず
- 生え変わりき期の歯の周辺
タフトブラシはペングリップと呼ばれる鉛筆の持ち方で保持し、軽い力で小刻みに動かして磨くと良いでしょう。
就寝前は必ず歯ブラシ
唾液は口腔内にとって色々な働きをしています。
自浄作用や殺菌作用、免疫作用、アルカリ性が好ましい口腔内環境が酸性に傾いた場合は中和させる作用や再石化作用を持っており、口腔内の健康を保つ大きな役割を果たしています。
しかし、就寝中は唾液の分泌が減少し、これらのメリットも減少してしまいます。
就寝前に歯ブラシで歯磨きをする事で、唾液の減少で高まる虫歯や歯周病のリスクを抑える事が出来るのです。
歯科医院で定期的な検査を受ける
口腔内を健康に保ち、歯周病を再発させないために、歯科医院での定期的なメンテナンス(検査)は効果が高いと考えられます。
メンテナンスは歯周病を再発させないように、特別な訓練を受けた歯科医師や歯科衛生士などの専門家が、専用の器具や材料を使い、歯周病の予防や再発を促す定期的な治療です。
3~6ヶ月ごとのメンテナンスが推奨されており、定期的なメンテナンスで歯垢や歯石を取り除き、歯周病になりにくい口腔内環境を保つことが見込めます。
また、部分的に歯周病が治りきらないケースもありますが、その場合も専門家による歯科医院でのメンテナンスを継続する事で、歯周病の進行を食い止めることにつながります。
メンテナンスは、プロフェッショナル・メカニカル・トゥースクリーニング「PMTC」と呼ばれています。
専門家である歯科医師や歯科衛生士が器具や薬剤を用いて、プラークを除去する方法です。
歯周病治療終了後も一度歯周病になった人は再発が多いと言われるため、PMTCを習慣化することで予防効果を見込めます。
歯周病はうがいで治る?
歯周病はうがいだけで治すのは難しい
歯周病の原因となるプラークはコロニー(集合体)を形成し、バイオフィルムと呼ばれるものとなります。
バイオフィルムはうがいだけで除去することは難しく、ブラッシングで適切に除去する事が必要になります。
歯ブラシでのブラッシングで、除去しきれない隙間のためのフロスや歯間ブラシなどを併用し口腔内を清潔に保つ事で、歯周病リスクや歯周病の悪化を抑える効果が見込めます。
うがいをしているから歯周病にならない・歯周病が治ると考えずに、正しい知識と方法で口腔ケアを行うことが必要です。
関連記事:歯槽膿漏とは|原因と予防法を解説
まとめ
- 歯周病の治し方は”セルフケア”と”プロフェッショナルケア”の併用が有効
- セルフケアは道具の正しい使い方が大切
- 専門家によるケアは、歯科医院で行われる個々人に合わせた医療行為であり、歯周病の予防に効果が見込める
- うがいだけでの歯周病の改善の見込みは少ないが、他のセルフケアやプロフェッショナルケアと併用する事により、効果を高める可能性があるのです
歯周病の治し方は、何か一つのケア方法だけを行うのではなく、複数のケア方法を併せて行うことが必要となります。
特に日々のセルフケアは最も重要であり、正しい方法で継続する事が大切です。
正しいセルフケアの継続のためにも、専門家によるブラッシング指導や定期的なメンテナンス、クリーニングを受けて、お口の健康を保ちましょう。
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