歯科治療は痛い・怖いイメージを抱きがちですが、抜歯となると更に不安が募る人も少なくありません。
しかし、歯を抜くような事態にならないように頑張って歯磨きしていても「親知らず」の場合、抜くこと(抜歯)を勧められることがあります。
親知らずはどのような状態であれば抜かないでいいのでしょうか。お口の健康を保ち、最適な選択が出来るために、メリットとデメリットを見ていきましょう。
ひだまり歯科クリニック院長 飛田逹宏
【経歴】
- 平成15年 大阪大学歯学部 卒業
- 平成19年 大阪大学大学院歯学研究科卒業 歯学博士
- 平成19~22年 大阪市内の歯科医院にて勤務
- 平成22年6月 兵庫県芦屋市に、ひだまり歯科クリニック 開業
ひだまり歯科クリニックでは、来院された患者様に丁寧な説明を心掛け、納得頂いた上で治療を行い、患者様にも積極的に治療に望んでもらうとともに、患者様が満足してもらえる治療が提供できるよう、最善を尽くしております。
親知らずとは
親知らずとは大人の奥歯の中で1番後ろに位置する歯で、正式名称は第三大臼歯、智歯(ちし)とも呼ばれています。
一般的に上下左右で合計4本ありますが、個人差があり生まれつき全てが揃っていない場合もあります。
永久歯は15歳前後で生え揃うと言われていますが、親知らずは永久歯の中では最後に発育し、10代後半から20代前半に生えてきます。
昔はその年代になると親元を離れている年齢で、親の知らない間に生えてくる歯だった事から「親知らず」と呼ばれるようになったというのが現在の通説となっています。
親知らずは必ず抜かないとならないわけではありません。
親知らずの状態とその人それぞれの状況、メリットデメリットを併せ医師と相談して判断する事が大切になります。
親知らずを抜いたほうがいい場合
お手入れがしにくい場合
斜めに生えていたり、スペースが足りず生えきらない場合、顎関節症などで口が開けずらくハブラシが届きにくい場合などは抜くことを検討すると良さそうです。
歯並びに影響する場合
顎の骨に親知らずが生えるスペースが足りないと、前方の歯をはじめ、他の歯に動いてもらって生えてこようとしてしまいます。
その結果歯並びが乱れることがあるため、抜いたほうがいい場合があります。
虫歯が進んでいる
親知らず自身に虫歯が出来てしまい進行が進んでいる場合、前方の歯も虫歯になってしまったり、顎の骨が溶けてきてしまう事があります。
また、一番奥の歯であるため治療する場合も、口を大きく開けるのが負担になる事が考えられます。
慢性的に歯茎の腫れや痛みがある
繰り返す腫れや痛みは親知らずを抜くことを検討するタイミング。
よく食べ物が詰まったり、歯磨きでお手入れがしずらい
常態的に虫歯や歯周病、口臭のリスクを高めていることになります。
また歯周ポケットが深くなっていることが考えられ、すでに歯肉炎や歯周病になっていることがあります。
親知らずと接する箇所の前方の歯に虫歯や歯周病がある
親知らずが生えている事で前方の歯が磨きにくくなり虫歯や歯周病になった可能性があります。
矯正治療を行う場合、矯正治療後
親知らずは歯列矯正の対象外であり、矯正している・矯正した歯列に悪影響を与える可能性がある場合が多く、ほとんどが抜く提案をされます。
親知らずを抜かなくてもいい場合
レントゲンで状態を確認し相談した結果、医師が以下の判断であれば親知らずを抜かなくてもいいケースがあります。
- 適切に生えて噛み合わせに役立っている
- 顎の骨に完全に埋まっていて問題がない
- お手入れがきちんとできる
- 虫歯はあるが進行していない
- 虫歯や歯周病の進行で前方の歯を近い将来失う可能性が高いため、入れ歯やブリッジの土台として役立てたい
- 矯正治療で適正な位置に動かす事が出来る場合
親知らずを抜くメリット
歯磨きがしやすくなる
親知らずは奥歯の一番奥に位置するため、ハブラシが届きにくく磨き残しやすい事で虫歯、歯周病、口臭の原因になります。
前方の歯や口内粘膜への障害リスクを減らす事が出来る
親知らずは斜めに生えてくる事も少なくなく、隣接する歯も磨き残しを発生させてしまい、虫歯、歯周病リスクが高くなってしまいます。
斜めに生えて来てしまった場合、粘膜にあたり口内炎を繰り返すケースもあります。抜いてしまうことで、口内炎や粘膜への刺激によるリスクを減らす事が出来ます。
小顔効果
人によっては親知らずを抜く事で歯を支えている骨が痩せるため、小顔効果がみられる事があります。
親知らずを抜くデメリット
抜いた後に痛みや腫れが出る事がある
親知らずを抜く事で、痛みや腫れが出て、一定期間食事が不便になる可能性があります。
一般的には30分~2時間程で飲食可能の指示をされることがほとんどです。
歯を抜くのも外科治療
抜歯(ばっし)は歯科、口腔外科で日常的に行われている最もポピュラーな手術ですが、埋没歯(歯茎に歯が埋まっていて出てきていない状態)やその他の状態によっては、抜く時に骨の内部や神経、血管を傷つけてしまう事が全くないとは言えません。
医師の説明を聞いて、最適な判断をしましょう。
治療の選択肢が限定される事がある
永久歯を失う事になった場合、いくつかの治療法がありますが、親知らずを抜いてすでになければ、親知らずを入れ歯やブリッジの土台、歯牙移植の歯として利用する選択肢はありません。
ただし、土台として使用する場合は歯茎や歯を良い状態で保つことが不可欠になるため、特殊なフロス等を使用しお手入れをしたり意識を高める事が重要になります。
親知らずは早く抜いたほうがいい理由
20代前後の回復力が活発な時期に抜いておくと傷口が早くふさがり、腫れや痛みが長引かず済む事が多いと言われています。
この時期は治癒スピードが速く親知らずが完全に形成される前である事から様々なメリットがあります。
リスクを減らせる可能性も
歯根が完全に出来上がる前の早期に抜歯すると、大きな神経が通る歯槽骨や下顎管にダメージを与えるリスクを減らす事が出来ます。
抜くのに掛かる時間が早い可能性が高い
骨の中に埋まっていて骨を削ったり割ったりする場合でも、骨や歯が硬くなっていない事が多いため早く抜ける可能性が高くなります。
歯を抜く事に時間が掛かってしまい、骨が空気に触れる時間が多いと、痛みや腫れが強くなる事があります。
前方の歯の保存のため
親知らずが横や斜めに生えると、磨き残しが発生する可能性が高く前方の歯も虫歯のリスクが高くなってしまいます。
抜かないでトラブルがおきてから治療法を検討するのでは、他の歯や骨にダメージを与えてしまう恐れがあります。
歯並びが悪くなるリスクを減らす事が出来る
親知らずは歯茎の下に潜った状態でも、生えてきた状態でも、顎にスペースがない場合、前方の歯を押し出し歯並びが乱れてしまう事があります。
口臭対策にも
親知らずは最も奥に位置しており、まっすぐ生えてこない事も多いため、磨き残しによって口臭が発生してしまう事があります。
私生活への影響を減らす事が出来る
親知らずが原因で痛みや腫れが出てきたため薬を飲みたいが、持病や妊娠中で痛み止めや抗生物質が飲めない状況があるかもしれません。
予定変更が難しい仕事や用事があるタイミングで親知らずが原因で痛みや腫れが出てくる事があるかもしれません。
いつ腫れや痛みが出てくるか分からず不安を抱える事になりかねません。計画的に抜いておく事で、余計な悩みを減らせるかもしれません。
まとめ
- 適切に生えて嚙み合わせに役立っている場合は、抜かなくていい親知らずもある
- 噛む役に立っていない場合や持病がある場合、妊娠出産の可能性がある女性は薬の服用を避けたい時期がある可能性を考えて、抜いた方がメリットが大きいと考える事が出来る
- 歯肉の炎症を起こしやすかったり、前方の歯に障害を及ぼすケースも少なくないため、抜かないで心配を抱えるより、抜く方がいい場合がある
- 親知らずの状態や抜く時の口の開け具合でも抜きやすさが異なるため、まずはレントゲンでの歯科医師による診断が大切
- 20代前後の早期に親知らずを抜く事は、痛みや腫れが少なく済むだけでなく、多くのメリットがある
親知らずは抜かなくてもいいケースもありますが、あごの骨の中に存在(埋没歯)しているだけでも隣の歯や顎の骨にダメージを与えてしまう事があります。
まずはレントゲンで状態を確認し、診断を受けることが重要です。
抜かない場合は注意点やリスクを理解し、判断する事が大切です。
抜く場合は、自身の状況を考慮し最適な時期を決めましょう。
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