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歯槽膿漏とは|原因と予防法を解説

歯槽膿漏

 歯槽膿漏(しそうのうろう)とは歯周病が進行した状態を表し、”歯周炎”を歯槽膿漏と表現することもあります。”歯周炎”は歯茎に炎症がある”歯肉炎”から、一段階進行した歯周病の状態です。

歯周病は細菌の感染により引き起こされる炎症性疾患であり、歯の周りの歯茎(歯肉)や歯を支える土台の骨が溶けてしまう病気です。

歯槽膿漏の原因を知り、正しい予防を行いましょう。

もし歯槽膿漏と診断されても、現在は様々な治療法があります。

歯科医院での治療とセルフケアを併せて行い、歯槽膿漏を治すことは可能です。

記事監修者

ひだまり歯科クリニック院長 飛田逹宏

【経歴】

  • 平成15年 大阪大学歯学部 卒業
  • 平成19年 大阪大学大学院歯学研究科卒業 歯学博士
  • 平成19~22年 大阪市内の歯科医院にて勤務
  • 平成22年6月 兵庫県芦屋市に、ひだまり歯科クリニック 開業

ひだまり歯科クリニックでは、来院された患者様に丁寧な説明を心掛け、納得頂いた上で治療を行い、患者様にも積極的に治療に望んでもらうとともに、患者様が満足してもらえる治療が提供できるよう、最善を尽くしております。

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歯槽膿漏【歯周炎】とは

歯槽膿漏に苦しむ女性

歯槽膿漏(歯周炎)の症状

歯と歯茎(歯肉)の境目のブラッシングが充分でない場合、”歯周ポケット”と呼ばれる歯肉溝にプラーク(細菌)が停滞してしまいます。

細菌が停滞する事により、歯茎(歯肉)が炎症を起こし赤くなったり、腫れるなどの症状が現れてきます。

健康な歯茎(歯肉)は薄いピンク色で引き締まっており弾力がありますが、歯周炎の初期”歯肉炎”の状態になると、歯茎(歯肉)は赤色になり腫れが認められる状態になります。

関連記事:虫歯で歯茎が腫れてしまう原因|適切な応急処置と治療法

歯周ポケット

歯周病の診断には「ポケット探針」と呼ばれる目盛りのついた器具で歯周ポケットの深さを測定します。

健康な歯と歯茎(歯肉)の間にも溝がありますが、1〜2㎜程度とされており、歯周ポケットと呼ばれる場合、歯と歯茎の間が炎症を起こし深くなった溝のことを指しています。

健康な歯肉の状態では歯周ポケットの深さは3㎜以内、初期の歯周病である”歯肉炎”の状態では4~5㎜、重度の進行した歯周病”歯周炎”の状態では6㎜以上とされています。

歯周ポケットの内部は酸素が少ない環境のため、酸素の少ない環境を好む歯周病菌が繁殖しやすく、深いポケットの内部では更に歯周病の進行が促進されてしまうのです。

歯茎は、歯周炎が進行し”歯周炎”=歯槽膿漏になると、赤紫色になり腫れてきます。

関連記事:歯がムズムズする原因と対処法

見た目の変化も

歯茎が溶かされ退縮することで歯の面積が広く現れ、歯が長く見えるようになる歯槽膿漏。

この頃には歯周ポケットが深くなっており、歯の土台となる骨(歯槽骨)が溶け、歯を失う可能性が高くなっています。

歯槽膿漏【歯周炎】になるリスク

歯槽膿漏になる、あるいは歯槽膿漏の進行を早めるリスクの原因の分類

「細菌因子」「宿主因子」「環境因子」「局所性修飾因子」

細菌因子:歯周病を引き起こす因子

口腔内にはおよそ400~700種類の細菌が存在すると考えられており、歯磨きが充分でなかったり食生活により細菌がネバネバした物質を作り出すと、歯の表面に付着し歯垢(プラーク)となります。

プラークは粘着性が強く、うがいだけで落とすのは困難です。

宿主因子:細菌因子と共に歯周炎に関与する因子

年齢や性別、個人の持つ病気に対する抵抗力が歯槽膿漏になるリスクに関係すると考えられています。

環境因子:細菌因子と共に歯周炎に関与する因子

食生活などの生活習慣、ストレスなどの環境が歯槽膿漏になるリスクに関係すると考えられています。

局所性修飾因子:細菌因子、宿主因子、環境因子の原因になりつつ、結果として歯槽膿漏になるリスクに関係すると考えられています。

歯並びや噛み合わせ、歯の形態などが局所性修飾因子です。

歯槽膿漏【歯周炎】になる習慣

生活習慣

歯槽膿漏になる、あるいは進行させる因子(リスクファクター)は「環境因子」である様々な生活習慣です。

  • 喫煙
  • 歯ぎしり、噛みしめ、くいしばり
  • 薬の長期服用
  • 口呼吸
  • ストレスが多い生活

生活習慣以外のリスクファクター

  • 糖尿病などの全身疾患
  • 歯の欠損:部分的に歯がない場合、歯のある場所に噛む負担が大きくなり症状の進行につながる
  • 不適合補綴物がある:不適合な差し歯や被せ物(冠)、入れ歯(義歯)の場合、噛み合わせが不良で症状の進行につながったり、隙間や穴があることで細菌が増えてしまう
  • 免疫抑制剤を服用中
  • 遺伝:両親が若い時から入れ歯や歯槽膿漏

近年は歯槽膿漏が、糖尿病や肺炎、認知症などの全身疾患のリスク因子になり得るとも言われている。

歯槽膿漏【歯周炎】の治療と予防法

歯周病治療全体として、まずは「歯周基本治療」と総称される歯垢や歯石の除去、これらの原因を取り除くことが治療と予防で大切です。

セルフケアで充分でない場合は歯科医院で行う清掃や検査、外科治療を併せて行い歯周病の治療を行います。

治療方法

歯科医院での歯槽膿漏の治療は、まず感染源をきれいに取り除くスケーリングやルートプレーニングです。

この時、セルフケアである歯磨き(ブラッシング)を正しい方法で併せて行うことが大切であるため、多くの場合歯科医師や歯科衛生士によるブラッシング指導を行います。

内服治療

歯槽膿漏が重症であったり、持病などで全身状態が悪い場合は、細菌を減らしたり抵抗力を強くするために内服治療を行うこともあります。

検査

進行している歯槽膿漏の場合は骨が溶け歯がグラついている事も多く、レントゲン撮影で顎の骨の吸収の程度を判断します。

その他、歯周ポケット検査で歯周ポケットの深さを測ったり、歯の動揺の具合を確認する動揺度検査などを行っていきます。

歯の動揺=グラつきは、横(水平)に動くだけなのか、上下(垂直)に動くのかなど歯槽膿漏の進行によって違いがあるもので、病状の判断材料になるのです。

これら検査や診察、問診を行ったうえで、総合的に診断をしています。

グラグラしている歯は

歯のグラグラ(動揺)が大きくブラッシングが上手にできない場合、暫間固定法と呼ばれる治療で両隣の歯と繋げ補強固定し、歯周組織の安静と咬合の安定を図ることも。

外科的治療

歯周組織再生療法

歯槽骨(歯の土台となる骨)が吸収されてしまっている場合、歯が安定しないため土台となる骨を作り直す治療である歯周組織再生療法を行うことがあります。

フラップ手術法

病状が進行してしまった歯槽膿漏では歯周ポケットが深くなっておりスケーリングで歯石が取りきれないことがあります。

そういった場合、麻酔をかけメスで歯茎(歯肉)を切り開き、器具を使って確実に歯石を取り除くフラップ手術法を行い治療することを検討します。

関連記事:歯石が勝手に取れた時の原因と対処方について

骨移植

溶けた歯を補填するために、他の部位から採取した骨や人工骨を使用し、治療が必要な部分に移植し、骨を再生させる骨移植を行うこともできます。

その他に、上顎の歯肉を裏側から採取し、歯茎(歯肉)が吸収された部位に移植する、結合組織移植手術などを検討するケースもあります。

予防法

セルフケア

歯槽膿漏の予防で何より大切なのは、セルフケアである正しい歯ブラシ(ブラッシング)を日々続ける事です。

原因となる歯垢(プラーク)を溜めず、増やさない事が予防するためになにより重要です。

歯科医院でのメンテナンス

定期的に歯科医院でメンテナンスを受ける事で、口腔内の状態とセルフケアの成果を確認し、専門家のアドバイスを受けることが出来ます。

また、歯石の除去やクリーニングといった歯科医院でのケアは高い予防効果が見込めるため、ぜひ時間を作って受診してみてください。

まとめ

  • 歯槽膿漏(しそうのうろう)=歯周炎とは、歯周病が進行した状態で”歯周炎”は歯茎に炎症がある”歯肉炎”から、一段階進行した歯周病の状態
  • 歯周病は磨き残しで発生するプラーク(細菌)の感染により引き起こされる炎症性疾患であり、歯の周りの歯茎(歯肉)や歯を支える土台の骨が溶けてしまう病気
  • 歯槽膿漏は生活習慣が関係していることが多く、セルフケアの見直しと共に生活習慣を見直すことで進行を食い止めたり治癒につなげることが見込める
  • 歯槽膿漏はセルフケアだけでは改善するのは難しいが、様々な治療法があり、予防や進行を抑える効果を含めて歯科医院で専門家によるメンテナンスを定期的に受けることが大切

また、歯槽膿漏の前段階である歯肉炎にも症状があります

日々のセルフケアを少し注意しながら行ってみましょう。

口腔内の状態を観察し把握することで、歯肉炎が進行し歯周炎=歯槽膿漏になってしまう前に適切な対処が出来るはずです。

歯科医院での治療は歯周病全般への予防効果も大きいです。

近年は歯槽膿漏が糖尿病、肺炎、認知症などの全身慢性疾患のリスク因子になり得るとも言われているので、口腔内の健康を維持していくことが身体の健康につながるとも言えます。

正しいセルフケアの継続と、歯科医院での定期的なメンテナンスを受け健康を維持していきましょう。

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