歯が黒くなっているけれど歯科医院で「虫歯じゃない」と言われたことがある方もいるのではないでしょうか?
実は、歯が黒くなっているから虫歯になっているとは言い切れません。虫歯でないケースもあるのです。
本記事では、歯が黒いけど虫歯ではないケースについて解説しています。
またその際の治療法についても説明していますので、歯が黒いけど虫歯じゃないと言われた方はぜひご参考にしてください。
ひだまり歯科クリニック院長 飛田逹宏
【経歴】
- 平成15年 大阪大学歯学部 卒業
- 平成19年 大阪大学大学院歯学研究科卒業 歯学博士
- 平成19~22年 大阪市内の歯科医院にて勤務
- 平成22年6月 兵庫県芦屋市に、ひだまり歯科クリニック 開業
ひだまり歯科クリニックでは、来院された患者様に丁寧な説明を心掛け、納得頂いた上で治療を行い、患者様にも積極的に治療に望んでもらうとともに、患者様が満足してもらえる治療が提供できるよう、最善を尽くしております。
目次
歯が黒いが虫歯ではない症例
歯が黒いけれど実は虫歯ではないケースは少なくありません。
虫歯でない場合は削って治療をする必要がないため、虫歯治療を行いません。
ただし、虫歯か虫歯でないか自己判断が難しいため、歯の色が気になる場合は早めに歯科医院を受診し調べてもらいましょう。
着色が原因の場合
歯が黒いけれど虫歯じゃないと言われたケースの中で特に多いのが、着色が原因である症例です。
着色が原因で歯が黒くなっている場合は、虫歯が進行しているわけではないため、歯を削って治療することはありません。
しかし、部位によっては着色か虫歯か見極めが難しいケースもあります。奥歯の溝などは虫歯である可能性も高いため、慎重に診断します。
着色か虫歯かを見極める方法は主に以下の3つです。
- 痛みやしみるなどの症状はあるか
- 歯に穴があいているか
- レントゲン写真で虫歯を確認できるか
上記のどれにも当てはまらない場合は、虫歯ではなく着色である可能性が高いでしょう。
薬による変色
「サホライド」と呼ばれる虫歯進行抑制の薬を塗ったことで黒く変色しているケースもあります。
サホライドには初期虫歯の進行を抑制する効果があるため、削る治療が難しい小さいお子さまに使用することがあります。
ただし、塗ったところが黒くなるデメリットがあるため、サホライドを使用する歯科医院は減少しています。
現在も目立ちにくい奥歯などには用いることはあるでしょう。
歯石の色
通常、歯石の色は白色もしくは黄色っぽい色をしていますが、歯石の上にステインやヤニが蓄積することで黒っぽくなることがあります。
また、縁下歯石(えんかしせき)と呼ばれる歯周ポケット内部に付着している歯石は、色が黒いのが特徴です。
神経が死んでいる状態
歯の一部だけが黒いのではなく、歯全体が黒っぽくなっている場合は神経が死んでいる可能性があるでしょう。
歯の神経を抜いたり、歯を強くぶつけたりして神経が死んでしまっている場合は、徐々に黒っぽく変色してきます。
歯を強くぶつけた場合は、歯の内部で起きた出血が象牙質まで入り込んで変色している可能性が考えられるでしょう。
また、神経の処置をしている歯であれば象牙質のコラーゲンが変色して代謝されないままになっているからでしょう。
むし歯だけれども、削って埋めるほどのむし歯ではない
「歯が黒くなっているのは虫歯だけど、削って治療するほどではない」と歯科医師に言われたことがある方も少なくありません。
歯に黒い点のようなものがあるけれど、治療するほどでもない初期虫歯の可能性もあります。
黒い点がすべて初期虫歯というわけではありません。歯科医院でどの程度まで進行している虫歯か調べる必要があります。
歯の表層のみの初期虫歯で、再石灰化による治癒が見込まれる場合は削って治療をすることはありません。
治療法について
歯が黒くなっている原因によって治療法は異なります。まずは原因を調べてから、歯の状態に合った適切な処置を行うことが大切です。
着色の場合
着色の場合は健康な歯を削る必要がないため、歯科医院のクリーニングで着色を除去します。
ただし、奥歯の溝が深い部分の着色などはクリーニングでも除去が難しいケースがあります。
その場合は、無理な処置をせずにそのまま様子をみることもあるでしょう。
サホライドの場合
サホライドにはフッ素と銀が含まれており、虫歯部分に銀が吸着して虫歯を抑制します。
サホライドの薬を塗布すると虫歯部分が黒くなるため、サホライド塗布後の黒い色が気になる場合は、削って歯科用プラスチックを詰める処置が必要です。
歯石の場合
歯石は虫歯ではないため虫歯治療は必要ありません。しかし、歯周病の原因になるため歯石除去の処置が必要です。
神経が死んでいる場合
気付かないうちに神経が死んでいる場合は、痛みがなくても細菌感染の恐れがあるため根管治療をしておいた方がいいでしょう。
神経をとる処置を行った後に変色が気になる場合は、被せ物にするか、歯の内部から漂白する「ウォーキングブリーチ」を検討するといいでしょう。
初期の虫歯の場合
初期虫歯で歯が黒くなっていて、再石灰化による治癒が可能と判断された場合は、削って治療することはありません。
定期的にフッ素塗布を行い経過観察となることが多いでしょう。
まとめ
- 歯が黒くなる原因は、虫歯が進行している以外にも着色や薬による変色、歯石の付着、神経が死んでいる、初期虫歯などが考えられる。
- 歯が黒い原因によって治療法や対処法が異なるため、まずは原因を確かめることが大切である。
- 初期虫歯によって歯が黒くなっている場合は、削る治療が必要なくフッ素塗布などで経過観察することが多くある。
歯が黒くなる原因は虫歯だけではありません。原因が虫歯でない場合に、歯を削ってしまうと余計に虫歯リスクが高まる可能性があります。
そのため、慎重に診断する必要があるのです。自分では判断するのが難しいため、歯が黒いのが気になったら早めに歯科医院を受診しましょう。
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