生まれたての赤ちゃんには虫歯菌がいないことはご存じでしょうか。
虫歯は、親や家族など周りの人から虫歯菌がうつることで感染してしまうんです。
そこでこの記事では、虫歯菌がうつるのは何歳までなのか?感染の原因と予防法について解説します。
ひだまり歯科クリニック院長 飛田逹宏
【経歴】
- 平成15年 大阪大学歯学部 卒業
- 平成19年 大阪大学大学院歯学研究科卒業 歯学博士
- 平成19~22年 大阪市内の歯科医院にて勤務
- 平成22年6月 兵庫県芦屋市に、ひだまり歯科クリニック 開業
ひだまり歯科クリニックでは、来院された患者様に丁寧な説明を心掛け、納得頂いた上で治療を行い、患者様にも積極的に治療に望んでもらうとともに、患者様が満足してもらえる治療が提供できるよう、最善を尽くしております。
虫歯菌について
ここでは、虫歯菌とはそもそもどんなものなのか解説します。
虫歯菌とは何か?
私たちの口の中には何百種類もの細菌がいます。
虫歯菌はその中の一種で、代表的な菌がミュータンス菌です。
ミュータンス菌は磨き残しである歯垢(プラーク)を棲家とし、糖質をエネルギー源にしています。
虫歯菌が口腔内に繁殖する仕組み
虫歯菌は、以下の条件が重なることで口腔内に繁殖します。
細菌
ミュータンス菌がいなければ、虫歯にはなりません。
口の中に歯垢が溜まると虫歯菌は繁殖しやすくなるので、毎食後歯磨きすることの大事さがわかります。
糖質
糖質は虫歯菌のエネルギー源です。
虫歯菌は糖質をエサにする際、歯を溶かす酸を出します。
これが虫歯の原因となるのです。
歯の質と糖分の在中時間
虫歯菌がお口の中にいたとしても、虫歯にならない方もおられます。
それには、もともと持っている歯の質や糖分がお口の中にある時間が関係しています。
歯の質が弱くても、毎食後歯磨きすることにくわえ、間食を控える、だらだら食べをしないことで虫歯菌の繁殖を抑えられるといえます。
虫歯菌の種類
虫歯菌には、主に2種類あります。
- ミュータンス菌
- ラクトバチルス菌
ミュータンス菌は、食べ物に含まれる糖質をエサとして酸をつくり、歯を溶かす虫歯の原因となる菌です。
ラクトバチルス菌は、食べ物にも含まれる菌で、腸内にいるとよい働きをする善玉菌です。
しかし、口の中では虫歯をどんどんすすめる働きをします。
ラクトバチルス菌は、虫歯の穴や詰め物と歯の境目を好むので、ミュータンス菌が作った虫歯をさらに大きくしてしまうのです。
虫歯菌の症状
虫歯は進行段階によって、Co〜C4にわけられます。
ここでは、虫歯の段階ごとの症状を解説します。
- Co……ごく初期の段階、自覚症状はない
- C1……初期の段階、自覚症状がないことがほとんど
- C2……冷たいものや甘いものがしみる
- C3……何もしなくてもズキズキ痛む
- C4……神経が死んで歯が痛むことはないが、根の先が膿むことで腫れたり痛んだりすることがある
初期の虫歯は自覚症状がなく、気付かないことがほとんどです。
虫歯は放置すればするほど大きくなり、痛みがでてしまいます。
初期段階のうちに虫歯に気付ければ、大がかりな治療が必要ないので、いち早く気付きたいものですね。
虫歯菌がうつる年齢について
ここでは、虫歯菌がうつるのは何歳までかや原因、予防法について解説します。
年齢別の虫歯菌感染リスク
虫歯菌は、生まれてすぐの赤ちゃんにはいません。
もともと歯茎や舌などには生息せず、歯に生息する菌なので、歯が生え始める生後6ヶ月ころから虫歯菌に気をつけなければいけません。
特に、離乳食を始める1歳7ヶ月〜2歳7ヶ月は虫歯菌の感染リスクが高まります。
口の中には虫歯菌以外にもたくさんの細菌が生息していますが、虫歯菌がその中でどのくらいの割合を占めるかは、大体2歳半ごろ、遅くても3歳までに決まります。
3歳以降は、大人から虫歯菌がうつっても感染しにくくなるといわれています。
このことから、2歳半ごろまでに虫歯菌が感染することを防げれば、虫歯になりにくいといえるでしょう。
虫歯菌がうつる原因
虫歯菌がうつる原因は、親や家族などの周りの人から、唾液を通して虫歯菌が感染してしまうことです。
大人が使ったお箸をそのままこどもに使う、キスなど、唾液が直接子供の口に入ることで虫歯菌が感染しやすくなります。
虫歯菌がうつる原因は、基本的には家族からです。
できるかぎり3歳までは虫歯菌が感染しないように、注意を払いましょう。
虫歯菌感染予防法
虫歯菌がうつるのを予防する方法は以下の通りです。
- 食器を共有しない
- キスしない
- 噛み与えしない
- フーフーしない
お箸やスプーン、フォーク、お皿など食器を共有することはやめましょう。
特に、食べ物を食べやすくするため、お子さんの食事を噛んでから与えることは、感染リスクが非常に高いので要注意です。
また、熱い食べ物をフーフーと息を吹きかけて冷ますことがあると思いますが、息に含まれる唾液によって虫歯菌がうつる原因になります。
離乳食の時期は、大人が食べているものを欲しがったり、食器を使いたがったりすることもあります。
完全に防ぐことは難しいかもしれませんが、神経質になりすぎずに、できるかぎり感染予防しましょう。
虫歯菌感染予防法
虫歯菌の感染予防法は、以下の3つの方法です。
歯磨きの正しい方法
虫歯を防ぐには、歯垢を取り除くことが大事です。
正しい歯磨きのポイントは以下の通りです。
- 小刻みに動かす
- 1本ずつ丁寧に磨く
- 優しい力で磨く
- 鉛筆持ち
- 歯ブラシを歯と歯の間、歯と歯茎の境目にきちんと当てる
歯を磨く時は、1本の歯を20往復を目安に、小刻みに磨きましょう。
強い力で磨くと歯茎を傷つけてしまいかねません。
虫歯を防ぐには、毎食後に優しい力で丁寧に磨くのがポイントです。
フッ素の効果と使用方法
フッ素には、歯を強くする働きやエナメル質の補修、虫歯菌の働きを弱める効果があります。
そのため、フッ素配合の歯磨きを使用することは虫歯予防におすすめです。
フッ素配合の歯磨き粉を使う際は、何度もうがいせず、1〜2回程度にとどめましょう。
口の中にフッ素が残り、虫歯予防の効果が高まります。
参考:フッ化物利用の概論
歯科医師による定期受診の重要性
歯が痛いなど、何か症状が出てから歯科医院に行く方は多いと思います。
しかし、虫歯は知らない間に進行し、症状が出るころには虫歯が大きくなっています。
そのため、定期的に歯科医院に通うことは重要です。
「症状もないのに歯科医院に通うのは面倒くさいし費用もかかる」と思われがちですが、虫歯は大きくなればなるほど、治療回数や費用がかかります。
定期的に歯科医院に通い、症状がない小さな虫歯のうちに見つけることで、結果的に治療回数や費用を抑えられます。
虫歯菌の感染リスクが高い人々
ここでは、虫歯菌の感染リスクが高いのはどんな人なのか解説します。
虫歯にかかりやすい人々
虫歯にかかりやすい人の特徴は以下の通りです。
- 口の中が乾きやすい
- 歯並びが悪いことで磨き残しが多い
- 歯周病で歯茎が下がっている
- 虫歯治療しているところが多い
唾液には口内をきれいに保つ作用があるため、口の中が乾きやすい方は虫歯のリスクが高まります。
歯周病で歯茎が下がると、歯のやわらかい部分が露出し、虫歯になりやすい上に進行しやすくなります。
詰め物や被せ物などの虫歯治療をしていると、歯と詰め物などの間に隙間ができやすく、虫歯のリスクが高まります。
この特徴に当てはまる方は、日頃のセルフケアにくわえ、定期的に歯科医院に通うようにしましょう。
虫歯にかかるリスクが高い生活習慣
虫歯にかかるリスクが高い生活習慣は以下の通りです。
- 歯磨きを1日1回以下しかしない
- 甘いものをよく食べる
- だらだら食べをする
- 口呼吸の方
甘いものを食べる、虫歯菌のエサとなる糖質が口の中にある時間が長いと、虫歯リスクが高まります。
甘いものをやめるのは難しいかもしれませんが、磨き残しをなくすために、毎食後に歯を磨くようにしましょう。
虫歯菌の感染についての追加情報
ここでは、虫歯菌と全身の健康の関係性や虫歯治療の方法などを解説します。
虫歯菌感染と全身の健康の関係性
虫歯は歯だけでなく、全身に影響を及ぼすことがあります。
神経まで虫歯になるとズキズキ痛みますが、発熱や吐き気、関節痛などの症状が出ることもあります。
また、虫歯菌が歯根の周りに広がると骨髄炎になるおそれもあります。
虫歯は放置せず、なるべく早く治療しましょう。
虫歯治療の方法
ここでは、虫歯の段階ごとの治療法を解説します。
- Co……経過観察でおわることがほとんど
- C1……削ってレジンを詰める治療
- C2……金属の詰め物を詰める治療
- C3……神経をとる治療をしたあと被せ物をする治療
- C4……抜歯
虫歯を小さい内に発見できれば、歯を削る範囲も少なく、治療回数もかかりません。
大きくなればなるほど歯を削る量が多くなり、痛みをともないます。
定期的に歯科医院に通い、なるべく早く虫歯を発見するのがおすすめです。
虫歯の合併症
虫歯を放置していると、毛細血管を通じて虫歯菌が全身に運ばれます。
この状態が続くと、心臓や腎臓、目の病気を引き起こすことがあります。
また、敗血症のリスクもあり、合併症の多臓器不全によって死に至ることもあるのです。
このように、長期間虫歯菌が全身に巡ることで、合併症を引き起こすこともあります。
放置せず、なるべく早く治療するようにしましょう。
まとめ
- 虫歯は、ミュータンス菌という虫歯菌が原因
- 虫歯菌がうつる原因は、親や家族などまわりの人からうつること
- 3歳ごろまでに虫歯菌がうつることを防げれば、虫歯になりにくくできる
- 虫歯菌がうつるのを防ぐには、3歳ごろまでは同じ食器を使わない、フーフーしないなど直接こどもの口に唾液が入らないようにすること
- 虫歯予防には、甘いものを控える、毎食後の歯磨き、定期的に歯科医師にチェックしてもらうことが効果的
3歳ごろまでに虫歯菌が感染することを防げれば、虫歯になりにくくできます。
しかし、完全に虫歯菌の感染は防げません。
虫歯予防には生活習慣を整え、毎食後歯磨きすることが効果的です。
虫歯は放置すればするほど大きくなり、痛みをともないます。
そのため、日頃のセルフケアにくわえ、定期的に歯科医院に通うようにしましょう。
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