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歯が抜けたときの応急処置と治療方法!放置がNGの理由を解説

歯が抜けた際の注意点

突然歯が抜けた。ヒトの歯は親知らずを除くと28本ありますので、一本くらい歯がなくても生活に支障がないと思うかもしれません。

しかし、歯が抜けることにより様々な弊害が予想され、放置して良いことはありません。

この記事では、歯が急に抜けた際の応急処置や、歯が抜けた部分を放置するリスク、治療方法や治療料金について詳しく解説します。

歯が抜けた際の応急処置

歯が抜けた際はすぐに応急処置をしましょう。

乳歯ならば心配ありませんが、永久歯の場合は決して放置せず、下記に記載の応急処置を冷静に施した上で、早急に歯科医院を受診しましょう。

止血する

歯が抜けた際はすぐに止血しましょう。清潔なガーゼを使用して止血することが理想ですが、手元にガーゼがない場合はティッシュペーパーで代用できます。

ガーゼやティッシュペーパーを丸めて歯が抜けた部分を圧迫してください。正しく圧迫をしていれば、通常15〜20分程度で出血が止まります。

歯が抜けた部分を指で触ったり歯ブラシを当てると感染から炎症を起こす可能性があるため、触ってはいけません。

口の中に血の味が広がる場合はうがいをしても構いませんが、強くうがいをすると出血が止まらなくなることがあるため、軽いうがいに留めましょう。

歯を保管する

ケガなどで歯が抜けた場合、歯を適切な方法で保管することで再植(歯を元の場所に戻すこと)ができることがあります。

再植のポイントは、歯が抜けてからできるだけ早く歯科医院で処置をすること、抜けた歯を擦らないこと、歯が乾燥しないように保管することの3点です。

歯が抜けてから30分以内に処置をすると成功率が高いと言われていますので、できる限り早く受診しましょう。

歯を保管する方法

  • 唇と歯の間に挟む
  • 口の中に含む
  • 牛乳または水に浸す

※小児は誤飲の可能性があるため口の中に含まず、牛乳または水に浸して歯科医院へ持参しましょう。

参考:公益社団法人日本口腔外科学会 歯と歯茎のトラブル
https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/ha/kega-oreta/

歯が抜けたときの治療方法

歯が抜けた時の治療方法は3つあります。どの治療方法にも一長一短があり、お口の中の状況によっては選択できない場合もあります。

治療費が高額になることもあるため、治療方法について主治医の意見や方針を聞いた上でじっくり検討しましょう。

インプラント

インプラントの正式名称は歯科インプラントまたは口腔インプラントと言い、人工歯根とも呼ばれます。歯が抜けた部分のあごの骨にチタンなどで作られたネジを打ち込み、その上に被せ物を取り付けることで、抜けた歯に代わって噛み合わせや見た目を回復する治療法です。

インプラントは新しい治療のように思われがちですが、その歴史は古くローマ時代から存在します。

その後、1980年代に骨と結合するインプラントが開発され臨床成績が大きく向上しました。

厚生労働省のデータによると40歳〜84歳でインプラントを装着している人は約1.4〜4.7%いるそうですので、現代において一般的な治療であると言えるでしょう。

参考:公益社団法人日本インプラント学会「インプラントの歴史について教えてください」
https://www.shika-implant.org/qa.html#q2

参考:厚生労働省 平成28年歯科疾患実態調査結果の概要「喪失歯の概要とその補綴状況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/62-28-02.pdf

インプラントのメリット

  • 他の治療法と比較すると、天然の歯に近い感覚で噛めたり、発音できる
  • 見た目では天然の歯と区別がつきにくい
  • 隣の歯を削る必要がなく隣の歯に力がかからないため、隣の歯が長持ちする
  • 少数の欠損に向いている

インプラントのデメリット

  • 外科処置に伴う出血・痛み・腫れ・合併症の可能性がある
  • メンテナンスを怠ると抜ける場合がある
  • 治療期間が長い
  • 自由診療のため治療費が高額

参考:公益社団法人日本口腔インプラント学会「教えて、インプラント治療ってなに」
https://min-implant.jp/

ブリッジ

ブリッジ(bridge=橋)は、その名の通り、歯が抜けた部分の両隣の歯を土台にし、歯が抜けた部分に人工の歯を橋のように架けて抜けた歯を補う治療方法です。

ブリッジの素材には、保険診療と保険診療外があり、保険診療の場合は素材の指定ができません。

ご自身の歯をできる限り長持ちさせるためにも、歯科医師とよく話し合った上で素材を決めましょう。

ブリッジのメリット

  • 入れ歯と比較すると違和感が少ない
  • 保険診療で作ることができる
  • 治療期間が短い
  • 少数の欠損に向いている

ブリッジのデメリット

  • 両隣の歯を削る必要があり、寿命を縮めてしまう
  • 隣の歯がない場合などはブリッジができない
  • 取り外しができないため不衛生になりやすい
  • 不具合が起きた場合は作り直しになることがある

参考:公益社団法人日本補綴歯科学会「補綴歯科って何?」よりブリッジ
https://hotetsu.com/p2.html

入れ歯

入れ歯は、なくなった歯や骨の一部をプラスチックや金属などの素材で補い、形態や見た目を補う治療方法です。

一部の歯を失った場合に使用する部分入れ歯と、上の歯もしくは下の歯の全てを失った場合に使用する総入れ歯があります。

入れ歯の素材も保険診療と保険診療外があり、素材によって使い心地が大きく変わるため、ご自身に合った素材を選ぶことが大切です。

入れ歯のメリット

  • 取り外しが可能なため衛生的
  • 保険診療で作ることができる
  • 合わない場合は修理や調整が可能
  • 多数欠損にも対応ができる

入れ歯のデメリット

  • 入れ歯の範囲が広い場合や素材によっては違和感が大きい
  • 部分入れ歯の場合、両隣の歯を支えにするため大きな負担がかかる
  • 入れ歯の着脱やお手入れに慣れが必要
  • 隣の歯がない場合などは入れ歯ができないことがある

参考:公益社団法人日本補綴歯科学会「補綴歯科って何?」より部分入れ歯・総入れ歯
https://hotetsu.com/p2.html

歯が抜けたまま放置するリスク

歯が抜けたまま放置することで様々な弊害が起こります。

奥の歯が抜けた場合、見た目には何も変わらないように見えますが、歯が抜けた直後から歯肉が痩せていき、口の中が徐々に変化していきます。

見た目の変化はもちろんのこと、やがて噛み合わせが悪くなったり、認知能力の低下を招きます。

噛み合わせが悪くなる

歯が抜けたまま放置することで噛み合わせが悪くなります。歯は隣同士、噛み合わせの上下の歯で支え合っています。

放置している期間が長くなると、隣の歯の傾斜(けいしゃ:空いたスペースに倒れ込んでくること)や、噛み合わせの反対の歯の挺出(ていしゅつ:歯が本来の位置から飛び出すように移動すること)が起こり、正しい位置で噛み合わせができなくなります。

また、噛み合わせが悪くなることにより力のバランスが崩れ、特定の歯に大きな負担がかかったり、顎関節症を引き起こすこともあります。

噛み合わせが悪くなることにより咀嚼(そしゃく:噛むこと)機能が低下し、消化器官に影響を及ぼすこともあるため注意が必要です。

記憶力や学習能力の低下

歯が抜けたまま放置することで記憶力や学習能力が低下します。

そのメカニズムについては様々な研究が行われていますが、イギリスで行われた10年間に及ぶ調査では、歯を失うと、記憶力などの認知能力が明らかに低下することが認められたそうです。

歯が抜けることで咀嚼機能の低下を招き、咀嚼機能の低下が大脳の一部である海馬を萎縮させます。

海馬は記憶や空間学習能力などに関係するため、結果として歯が抜けることが記憶力や学習能力の低下に繋がるのです。

また、咀嚼時に使う筋肉から感覚情報を受け取る神経として三叉神経があります。

三叉神経は脳神経の中でも重要な役割を担っており、歯が抜けて咀嚼が弱くなることで三叉神経の反応が悪くなり、学習や記憶などの能機能の低下を引き起こすと考えられています。

これらの脳機能の低下が認知症の発生に寄与するとも言われており、歯が抜けたまま放置するリスクの一つとなります。

参考:University College London「Tooth loss linked to slowing mind and body」https://www.ucl.ac.uk/news/2014/dec/tooth-loss-linked-slowing-mind-and-body

審美性(見た目)が悪くなる

歯が抜けたまま放置することのリスクで一番イメージがしやすいことは、審美性(見た目)が悪くなることです。

前歯が抜けると当然目立ちますが、奥歯であれば抜けた部分が目立たないと考える方もいらっしゃいます。

しかし、ふと口を開けた時に歯抜けが目立ったり、写真を撮るときに歯抜けの部分が写らないかヒヤヒヤするなど、他人の目が気になり精神衛生上良くないと言えるでしょう。

また、歯が抜けたまま放置することにより、口の周りの筋肉が衰え、顔の印象が変わってしまいます。

高齢者の口周りがキュッと梅干しのように萎んで見えることはないでしょうか。

これは長い期間歯が抜けた状態のため、口周りの筋肉が衰えてしまっているのです。老けた印象にもなるため、より一層見た目が悪くなります。

歯が抜けた時の一本あたりの治療料金

歯が抜けた時の一本あたりの治療料金の相場は下記の通りです。

しかし、歯科治療は患者さんごとのオーダーメイドであり、お口の中の状態により治療は千差万別です。

当然、患者さんごとに治療料金や治療期間に差が出ます。

特に保険診療外の治療は、歯科医院ごとに治療料金、素材、術式、期間などが異なるため、治療を進める前に主治医としっかり話し合うことが重要です。

治療法治療料金治療期間
インプラント約20万円〜50万円約3か月〜1年
ブリッジ約2万円(保険診療)〜40万円約1か月〜3か月
入れ歯約1万円(保険診療)〜50万円約2か月〜4か月

※保険診療は3割負担として治療料金を計算しています

この記事のまとめ

  • 歯が抜けた際は応急処置をして早急に歯科医院を受診する
  • 歯が抜けた際は放置せず必ず代替治療を行うこと
  • 歯が抜けた際の治療方法はインプラント、ブリッジ、入れ歯がある

歯が抜けたまま放置していて良いことは一つもありません。

ご自身の歯を一生使えることが一番ですが、万が一歯が抜けてしまった場合は早急に歯科医院を受診しましょう。

歯が抜けたときの治療は、むし歯などの治療と比べて長期間、高額になることがあるため、どこの歯科医院に行けば良いかわからない場合は、いくつかの歯科医院で治療方針を聞いてみることも手でしょう。

重要なことは、歯が抜けたまま放置をしないことです。必ず何かしらの代替治療を行いましょう。そして、あなたがこれ以上大切な歯を失わないよう、治療終了後は定期的に歯科検診に行くことをお勧めします。

記事監修者

ひだまり歯科クリニック院長 飛田逹宏

【経歴】

  • 平成15年 大阪大学歯学部 卒業
  • 平成19年 大阪大学大学院歯学研究科卒業 歯学博士
  • 平成19~22年 大阪市内の歯科医院にて勤務
  • 平成22年6月 兵庫県芦屋市に、ひだまり歯科クリニック 開業

ひだまり歯科クリニックでは、来院された患者様に丁寧な説明を心掛け、納得頂いた上で治療を行い、患者様にも積極的に治療に望んでもらうとともに、患者様が満足してもらえる治療が提供できるよう、最善を尽くしております。

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